赤十字は世界189の国、地域で、国籍や人種、宗教、社会的地位に係わらず、「人道・公平・中立・独立・奉仕・単一・世界性」という7つの原則のもとに、世界最大のネットワークを駆使して行動する人道機関です。尚、国際赤十字を支える機関として、赤十字国際委員会(ICRC)、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC、連盟)、各赤十字・赤新月社があり、この3つの機関が各役割を果たし、総称として国際赤十字・赤新月運動と呼ばれています。
主な活動は紛争や災害による傷病者の救護活動や、紛争時の人道支援、平時の災害対策、医療保険、青少年育成、赤十字の基本原則や国際人道法の普及や促進等、多岐に渡っています。
赤十字のおこりは、スイス人の実業家アンリー・デュナンが1859年6月、フランス・サルディニア連合軍とオーストリア軍の間で行われたイタリア統一戦争の激戦地ソルフェリーノの近くを通りかかった際に、4万人の死傷者が打ち捨てられているという悲惨なありさまを目にしたことがきっかけです。
デュナンは、すぐに町の人々や旅人達と協力して、放置されていた負傷者を教会に収容するなど懸命の救護を行い、「傷ついた兵士はもはや兵士ではない、人間である。人間同士としてその生命は救われなければならない」との信念のもとに救護活動にあたりました。ジュネーブに戻ったデュナンは、戦争犠牲者の悲惨な状況を伝えるとともに、1862年11月『ソルフェリーノの思い出』という本を執筆しました。これがヨーロッパの各地で反響を呼び、赤十字の前身である5人委員会が発足、ヨーロッパ16カ国が参加した国際会議で最初の赤十字規約が出来ました。
この規約により各国に戦時救護団体が組織化されて、平時から相互に連絡を保つ基礎ができ、デュナンの提案の一つが実現しました。翌1864年には、ヨーロッパ16カ国の外交会議で最初のジュネーブ条約(赤十字条約)が調印され、ここに国際赤十字組織が正式に誕生したのです。
赤十字には国際人道法があります。それは、武力紛争(戦争)において、負傷したり病気になった兵士や捕虜、そして武器を持たない一般市民の人道的な取り扱いを定めた国際法です。「国際人道法」という名称の条約は存在しませんが、「1949年のジュネーブ四条約」、「1977年の二つの追加議定書」「2005年の第3追加議定書」を中心としたさまざまな条約の総称が「国際人道法」です。2014年8月現在では国連加盟国は193カ国ですが、1949年のジュネーブ四条約締結国は196カ国となっていて、このジュネーブ四条約は世界共通のルールであると言っても過言ではありません。1977年、ジュネーブ条約追加議定書については日本政府が2004年6月第159回通常国会で、ジュネーブ条約第1および第2追加議定書への加入を承認し、8月31日に正式に加入、2005年2月28日に日本において両議定書が発効しました。